読書は人生の生きていくための大切な力を創る
読書の秋です。読書をしない、活字離れと言われ、読書の意義を問われる報道等が多くなってきていますが、私は読書は、その人の人格を形成する大切な取り組みである思っています。
幼稚園でも、読書や読み聞かせなども行い、脳で物語などのイメージを組み立てることのできる空間認知力の力などをつけることも進めています。
読書について考える時、私は今でも小学生の時の自分のことを思い出すことがあります。
腕白で落ち着きのない私にある日、父は何も言わず黙って1冊の本を渡してよこしました。本などほとんど読むことのない毎日でしたが、父から渡された本なので仕方なく、ちょっと読んでやめようと思い、本を開きました。その本は『フランダースの犬』で書き出しはこうでした。
夏の日の、かんかん照りつける道を、荷物を山のように積んだ荷車が、あえぎあえぎ進んでいます。ところが、その重い荷車を引いているのは、馬でもなければ、牛でもありません。ただの一匹の犬なのです。荷車のそばには、むちをもった男が、のんきそうにたばこをふかしながらついていました。
この書き出しが妙に気になりました。あえぎあえぎ重い荷車を引いている犬が登場していたからかもしれません。いつもなら数ページ読んで放り出してしまうのに、先へ先へとページをめっくていったことを覚えています。少年のネルロと犬のパトラッシュが雪の中で亡くなったとき、私は瞼に熱いものをためたことも今でも思い出します。
『フランダースの犬』には、愛、いたわり、情け、憎しみ、悲しみ、傲慢さ、冷笑、軽蔑、嫉妬など、さまざまな感情が描かれています。子どもながらに私は、そうした感情を理解するようになっていきました。
例えば、「ああ、これは以前モヤモヤしていた自分の感情と似ているなあ」と、自分にあてはめて考えることが少しできるようになりました。落ち着いて自分を見つめることも少しですができるようになりました。
物語を読むことで、感情の引き出しが増えていきました。感情の引き出しが増えれば、落ち着いてモヤモヤした気持ちを理解できるようになってきています。
「そうか、あのときのイライラは憎しみだったのか」というように、自分の感情が理解できるようになりました。
私の父はいつもけんかばかりして落ち着きのない私を見て、自分自身を見つめるための1冊の本をよこしたのだと感じ、今ではそのことを感謝しています。
これは、物語の持つ大きな力であり、読書本来の趣旨でもあります。子どもは、言葉が足りません。そのためイライラの気持ちをためて、それがパニックになってトラブルになってしまうことがあります。小さい子であればあるほど、感情を自分で理解することができれば、イライラすることが減っていきます。ムカつくことも、キレることも、減っていくでしょう。
本を読み、言葉を獲得することは、語彙が増えるという量的な面にとどまらず、感情や感性の基盤をしっかりと充実させる力も持っています。
また、脳で物語をしっかりと組み立てる空間認知力の力をつけることもできます。
子どものうちから、落ち着いた生活を送るためにも必要なことです。
私は、その人の人生に大きな影響を与えるものとして、子どものころ読んだ本と多くの人に愛された記憶が、その人の一生を決定づける要素にもなるのではないかと思っています。
園長 伊勢 昭

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